【あらすじ】
昭和初期、池袋界隈にポツリポツリと粗末なアトリエや下宿屋が建ちはじめ、画家たちは一人また一人とそこに移り住み、やがて芸術家の町と化すこととなる。詩人・小熊秀雄はパリの芸術街モンパルナスにちなんで「池袋モンパルナス」と名付けた。遠く池袋の空が夜の光を反映して美しく見える頃、画家達の足はその光に誘われるように池袋へと向いてゆき、酒をあおり、女給と戯れ、歌い、踊り、そして芸術論を戦わせた。
1938年、国家総動員法成立。池袋の町の景色からも色が失われはじめ、政府は「総力戦」の名のもとに人々を駆り立てていったー。
【『池袋モンパルナス』期待しています。】
新池袋モンパルナスまちかど回遊美術館実行委員長 小林俊史
赤煉瓦の校舎を横目に立教通りを行けば、今は暗渠の谷端川に小さな橋の痕跡があります。池袋モンパルナスと呼ばれた時代、池袋で呑み、談論風発の勢いのまま長崎アトリエ村に帰る芸術家たちにとって、この霜田橋はサロンと創作の場の境界だったようです。
隣の住人が意識を集中して制作する音に嫉妬し、ナニクソ負けるものかと競い合うかのように創作への熱情を燃やした当時の暮らしを、彫刻家白井謙二郎は「芸術家が芸術のことだけ求めていられた最高の空間」と回顧します。
やがて激しい戦時時局へ、戦争賛美以外の作品は許されないなか、詩人小熊秀雄が「芸術の植民地」と呼んだこの地は「党派を超えた解放区」であり続けます。軍の招集で満州に渡った画家野見山暁治は「歯ぎしりのユートピア」と表現し、「あそこに1日でも戻って死にたい」と願いました。
今、豊島区では毎年5月に「新池袋モンパルナスまちかど回遊美術館」を開催しています。池袋の街中の公園や店舗、劇場、ギャラリーなどで作品を展示し交流するイベントに多くの若きアーティストが集います。
サロンと制作の往来、そして切磋琢磨して生きる喜び、それが池袋の原点です。劇団銅鑼さんの「池袋モンパルナス」再演を楽しみにしています。
新池袋モンパルナス西口まちかど回遊美術館 http://kaiyu-art.net/
【Staff】
作/小関直人
演出/野﨑美子
美術/佐藤朋有子 照明/鷲崎淳一郎
音楽/芳賀一之 音響/中嶋直勝
衣裳/広野洋子 振付/柳下久美子
舞台監督/野口岳大
演出助手/宮藤希望 舞台監督助手/鈴木正昭
宣伝美術/山口拓三(GAROWA GRAPHICO)
制作/田辺素子
【Cast】
【舞台写真&感想】
●とても素晴らしかったです。戦争、二度とおこしてはいけませんね。ありがとうございました。(50代女性)
●池袋モンパルナス展をみて公演を知った。あの時代に生きた(生きられなかった)画家のすがたがとても感動的だった。全国的に公演すべきです。(50代女性)
●それほど遠くない過去に、この土地で自由を求めた戦いがあったのですね。未だ、そくばくも多いこの世の中ですが、より人が人らしく生きて行ける世の中にしていく助けができればと思っています。(20代男性)
●自分も創作者(小説)なので、とても共感できました。歌や音楽の演出がすばらしく、場面転換もマッチしていて感動しました。配役、演技もよかったです。個人的に戦前の文化に興味があるので、また同じころの日本の美術家にフォーカスした舞台を見てみたいです。見に来てよかった。ありがとうござました。
●泣いた。苦しい。辛かったけど感動しました。(30代)
●人生の中の幸せの瞬間、逆境の中での己の欲のために費やした時間がもがきが、すごく心に響きました。セットが倒れてくるシーンはやっぱりおどろいてしまいました。ありがとうございました!(20代男性)
●人はなぜ絵を描くのか、生きる証として描く、では生きるとは何か、生きるとは、つまるところ、絵を描くこと、そしてその循環の中で葛藤しながら生きていく。若者たちが闇の中に浮かぶ星のように鮮やかに描かれていたと思います。(でも、キジもったいない・・・)
●板橋区在住でアトリエも家から近くにあったのに今回の公演まで、こちらの劇団を知らずにいました。こんなに近いところに演劇をやっている所があったとは…。と思いつつ早速みなくてはと観劇にきました。戦時中の芸術家たちという他ではあまり見ない観点から、作品を描いていて、あまり知らなかったこともありました。私は全く戦争を知らない世代で、そうぞうでしかわかりませんが、こんな時代があったことをわすれてはいけないと思いました。(10代女性)
●「芸術がなくて国が滅びることはない」などと決して偉い人に言わせてはいけないと思いました。人間が表現せずにはいられない心の動きこそが芸術で、それなくしては人間の世の中ではありません。近頃の、個人より全体(組織?)を重んじるような風潮に少し不安になります。(60代女性)
●池袋はあまり馴染みのない町で、かつて芸術家の町であった事、実は今日初めて知りました。お芝居を通して当時の活気、情熱がまるで今、自分がそこにいるかのように感じられました。あの時代に生きてみたいと思いました。色々な時代、国で芸術は政治の犠牲になってきましたが、芸術が自由でない国ほど不幸な国はないと思います。皆様の芸術を愛する気持ち、表現への熱に、とても胸を打たれました。千秋楽、本当におめでとうございます。本日はありがとうございました。(20代女性)
●昨今の時代状況と当時のそれがシンクロしている内容であることは、決して良いことではないと思いますが、そんな時だからこそ、この舞台を見ることができて大いに意味があったと思います。時代の波にもまれて表現の自主規制をせざるを得ない状況になりそうになりながらも、彼ら池袋モンパルナスは自分たちの信念を貫きました。彼らのように、私自身もいられるだろうかと、観劇中何度も問いをつきつけられました。彼らのような志ある若者が戦争で死なねばならないという不条理に涙が止まりませんでした。演者の方たちと実在の画家の方たちの情熱が、ひしひしと伝わってきました。公演おつかれさまでした。ありがとうございました。また観たいです。(30代女性)